伊藤七男個展

1.7(Tue) – 1.24(Fri) 2003

PM12:30PM7:30  Closed on Sunday

 

 

今展DM 表裏













開催日程
2003年01月07日(Tue)~01月24日(Fri)

ギャラリーオープニング企画


 

絵画のありかを求めて

「絵画」とはどこにあらわれるものなのだろう。筆を受け止めては抗いつつその力を押し返すカンヴァスの上にだろうか。輝きを帯びた絵具の表面にだろうか。 あるいは、その前に立つ私たちの網膜の上にか。それとも、現前するさまざまなかたちを、打ち消しながらもつくりあげていく、描き手の内面にのみあられるも のなのか。
伊藤七男の仕事はずっとそのこと、絵画のありかはどこか、という問いに向けられてきた。70年代末から80年代初頭にかけての、透明な支持体を用いた作 品でも、追求されたのは絵画のあらわれる場所であった。すべての表面を描きつくし、さらには透明な支持体を透かして壁面へと映し出される濃密な線。物質の 表面に描かれることなくしては存在しえない絵画を、あえてその表面から解き放つかのような荒業。絵画の物質性と平面性に対する真摯な問いが重ねられた。
伊藤は自らに課したその問いから逃げることがなかった。今となっては「狂乱」という言葉で思い出される80年代、そうして「失われた」90年代。そのよ うな時代の中を、伊藤は自らの絵画のあらわれを求めて、ひとり歩いてきた。「絵画」のありかはどこか、と問いつづけながら。
作品はしばしば自立するスクリーン状の形態をとる。あるいはシェイプド・キャンヴァスに描かれて、その置かれる空間と拮抗する。作品を見る私たちは周囲 を巡り、壁を見渡し、ときに作品のただなかにうがたれた穴や隙間から、向こう側の空間を覗き見たり、する。支持体の形態に驚き、その上にあらわれるさまざ まなテクスチュアを喜ぶ。伊藤の作品を見る体験は、絵画を見ることであると同時に、立体作品を見ることでもあり、さらにはその作品を通り抜け、また戻り来 る、私たちの視線の内に生起する時間そのものの体験でもある。いちどきには捉えがたいその作品は、見る者にさまざまに異なる領域を交通することを促す。作 品空間の内と外、美術の歴史の過去と現在、芸術の世界と生活の空間。ゆったりとした視線の運動の中で、私たちも伊藤と共に、絵画のありかを探していること に気づくだろう。美術という営為そのものの存在すら危うい今日、ひたすらにそのありかを探しつづけること、そのことによってしか、私たちの美術は存在しえ ないのかもしれない。伊藤の静かな歩みはそのことを教えてくれる。

杉村浩哉(栃木県立美術館学芸員)


 

PROFILE

伊藤 七男 (いとう ななお) 絵画造形作家

53年岐阜県生まれ。80年東京芸術大学大学院で芸術学修士を取得。
創作活動は、身近にある素材(和紙、木、ガラス、ビニール ) などを使って平面から立体へと展開し、空間や光と反応する彩りを重視した作品が多い。
今までの美術の枠組みにとらわれず自由な発想で芸術の可能性を追求している。


 

【個展】
1979 サトウ画廊    銀座
1981    コバヤシ画廊    銀座
1982    田村画廊    神田
1983    コバヤシ画廊    銀座
1985    ギャラリー射手座    三条
1985    真木画廊    神田
1987    パレルゴン    神田
1988    パレルゴン    神田
1988    ギャラリーぐばく    日高
1988    シェリーアートスペース    神田
1989    NWハウス    早稲田
1990    お茶の水画廊    お茶の水
1991    スペースアルテクト(大宮西武) 大宮
1992    お茶の水画廊    お茶の水
1992    ギャラリー祇園    狭山
1993    ギャラリーぐばく    日高
1995    お茶の水画廊    お茶の水
1997    T・BOX    銀座
1997    ギャラリー魁    那須塩原
1999    お茶の水画廊・淡路町画廊    お茶の水
1999    旧三波川中学校・あそびの学校    鬼石
1999    自宅展    那須
2001    ひこね市文化プラザ    彦根
2002    馬頭町広重美術館    馬頭
2003    SPCギャラリー    兜町


【グループ展 団体展 企画】
1977    間の変奏    真木画廊/神田
1980    絵画のアナグラム    横浜市民ギャラリー/横浜
1981~84  午後の会    玉屋、十字屋/銀座、大阪フォルム画廊/銀座
1984~88    大谷地下美術展(4回出品、1回企画)大谷資料館地下採掘場跡
1986    アナロジー ’86    千葉県立美術館/千葉
1986    万象の変様プレ展    パレルゴンII/神田
1986    万象の変様    埼玉近代美術館/浦和
1987    斉藤豊作と日本の点描    埼玉近代美術館/浦和
1988    絵画からの展開    所沢西武/所沢
1989    THREE EYES EXHIBITION    淡路町画廊/お茶の水
1989    ウインドウ オブ マージナルアート    浜松遠鉄百貨店/静岡
1989    HEXAGON    大宮西武/大宮
1991    日本ベルギー国際交流展 旧金竜小学校校舎/浅草
      ORIENTATION CINQUANTE゜NORD/ブリュッセル
1991~00    膨脹展  所沢ミューズ  レタホア王の館/所沢、ギャラリー門  ギャラリー桃山  市立博物館/狭山
1993~98    DRAWINGS展(6回)  ギャラリー宏地/神田
1994    3人展    富士見公民館ホール/狭山
1999~01    あじょったや展    ライスセンター/千葉
2000    アートウォーク    自宅/那須
2001    千年の扉    栃木県立美術館/宇都宮
2002    馬頭畑展    中村宅/馬頭
2004    水彩の回廊展    SPCギャラリー/兜町
2004    スローアート展    SPCギャラリー/兜町