玉征夫個展

2.26(Wed) – 3.14(Fri) 2003

PM12:30PM7:30  Closed on Sunday

 

 

今展DM 表裏








開催日程
2003年02月26日(Wed)~03月14日(Fri)

 

ー虚空からー

私が最初に描いた絵の記憶は、地面にクギで描いた飛行機である。
その頃の土や水、空気の肌触りは、
記憶の古態として身体の奥に眠っている。
だから、ただひたすらに描いて呼び起こす。
虚空からの贈り物を感じるのはそんな時である。   玉 征夫

 

玉 征夫個展 ー虚空からー に寄せて                稲 憲一郎(美術家)

モノクロームに近い点の集積、アクリル絵の具を使ってのドットによる作品から、 ’00 年の個展を境にその作品は大きく変貌した。

99年当時、玉さんは描くことに行き詰まっていた。そんな頃ペルーに旅し、ナスカの地上絵を飛行機から見る機会があった。子供の頃、ちょうど敗戦直後で空には B29が飛んでいて、落書きをするような紙もなく地面に釘等で絵を描いていた。
ナスカの地上絵をペルーの上空から見た時、そんな絵のことを思い出したと言っている。

’98 年までの彼の作品は、今の作品に比べればはるかにコンセプチュアルな仕事で、先に方法があり、それをどこまで画面の中で実践していけるかという作業だった。
それは制作の過程で出てくる様々な問題を作業の中で制作に還元する、拾い上げていくのが難しく、いろいろなものを切り落としていかなければならない。そんなところからの行き詰まりもあったのかもしれない。そしてペルーでの体験が、描くことに対する気持ちとともに、線で描くという方法の問題としても、絵を描く事の原初的なものとして喚起したのだろう。

点というのは、どこかでアウトラインを決定しないと形象になりにくいが、当然のことだが点に対して線は、それ自体で形象を結んでしまう。だから彼が描くことの方法として線を選択したときから彼の創り出す画面は、全く違うものを見せていると感じられる。

絵を描くという事は、自分がある方向に向かってアクションを起こす運動だが、線というのはそういうものがはっきりと見えてくる。線というのは否応なく、ある運動感とか方向性を持ち、そのストロークがどちらからどちらへ向かって引かれているかということだけで、あるイリュージョンを生成する。それは作家の意図にかかわらず、見る側に何がしかをイメージさせる形象として現れてくるのだろう。

例えば頻出する、こちらから向こうへ、向こうからこちらへ回転する円運動が創り出す、螺旋状の線には、その巾を空気が流れて行き、流れの巾を浮いているという感覚を覚える。またそれは、作者自身の願望とも繋がるのかもしれない。彼が意識的に繰り返し画面に描いている飛行機のような形態も、上空からあの子供の頃に地面に描いた落書きを見るように、下へと向かう視点を繰り返そうとしているのかもしれない。そしてそれらが創り出す線は、二次元の広がりの中にイリュージョンとしての空間性を成立させ、見る者の記憶を呼び起こすような形象を結んでゆく。

線が画面という限定された空間を、時には大きくはみ出していく。それと同じように画家は自分を逸脱した部分をその画面の中に見ることが出来る。そしてそれらを拾い上げ、もう一度画面の中に還元することも出来る。

こうして彼が描く一本一本の線の動きや強さ、方向性といったものが創り出す差異が、彼の個別性-玉 征夫-という差異として見えてくるのだろう。

 


PROFILE

玉 征夫(たま いくお) 画家

1944 岐阜県高山に生まれる


【個展】
1982 画廊春秋(東京)
1984 村松画廊(東京)
1985 真木画廊(東京)
1987 Gallery Atelier Meidsem(パリ)
1988 東京都美術館Aギャラリー(現代アーティストセンター展/東京)
1990 Artist Space lriYa(東京)
1991 J2 GALLERY(東京) ギャラリー宏地(東京)
1992 ギャラリー宏地(東京)
1993 J2 GALLERY,ギャラリー宏地 同時展(東京)
94~98 ギャラリー宏地(東京)
2000 セッションハウス・ガーデン(東京)
2001 花園画廊(東京)
2002 ギャラリー睦(千葉)ポルトデザール(東京)ウィリアム・モリス(東京)
2003 SPC GALLERY(東京)
2004 SPC GALLERY(東京)
2005 SPC GALLERY(東京)2回開催 (8月,11月)
2007 SPC GALLERY(東京)
2008 SPC GALLERY(東京)
2010 SPC GALLERY(東京)


【グループ展】
1970 Two-Men Exhibition(ギャラリーオカベ/東京)
1983 Artrans-Gigmenta ’83(アクシスギャラリー/東京)
1985 Cherry Brossom Festival(画廊春秋/東京)Lithograph Review 44(大阪フォルム画廊/東京)
The Year End Festival(画廊春秋/東京)
1986 Lithograph Review 44(アクシスギャラリー/東京)
1987 Lithograph Review 44(Maison des Beaux-Arts/パリ)
1991 Lithograph Review 1991 Tokyo + Wasington,D.C.
(町田市立国際版画美術館/東京)
(GALLERY K,JAPAN INFORMATION & CULTURE CENTER,
GEORGE WASHINGTON UNIVERSITY GALLERY/ワシントン)
MOVE ’91(ギャラリーセーラム/千葉)
1992 第5回アクリラート展(目黒美術館/東京)
1993 GROUP SHOW(J2 GALLERY/東京)
93~98 DRAWINGS(ギャラリー宏地/東京)
1996 K-NT134 「音のない夏」(三浦市三崎旧魚市場/神奈川)
1997 芝山国際野外アート展 ’97(芝山仁王尊観音教寺/千葉)
1999 Two-Men Exhibition(ギャルリーヴェルジェ/東京)
アートエミッション熱海’99(後楽園ホテル/静岡)
ヴェルジェ展(ギャラリーヴェルジェ/東京)
2003 DRAWINGS 2003(SPC Gallery/東京)
ピエゾグラフ展(ポルトデザール/東京)
2004 DRAWINGS 2004(SPC Gallery/東京)
ピエゾグラフ展(新井画廊/足利)
音楽からの贈り物展 III(gallery汲美/東京)
古代と現代の出会い(歐亞美術/東京)
それぞれのピエゾグラフ(ポルトデザール/東京)
2006 WAX WORK SITE(ギャラリー砂翁/東京)

【その他】
1991 「ZONE」THE ALTERNATIVE ART SCENE 公開プレゼンテーション
(財)多摩市文化振興財団(パルテノン多摩/東京)
1992 第5回ホルベイン・スカラシップ

【収蔵】
1987 パリ国立図書館(リトグラフ)