稲 憲一郎 個展

稲 憲一郎 個展




開催日程
2004年01月20日(Tue)〜02月07日(Sat)

 

表面のざらつきのなかで                     稲 憲一郎

90年代の半ばから、それまでの壁から突き出るような、あるいは壁にそうように曲面と、時には切り落とされたような面を持つ立体的な形態を支持体として、その上に線や色彩を用いて描くという作品と平行して、キャンバスや紙と言った平面の上に描く作品を作ってきた。

立体的な作品を作ってきたときもそうだったが作る契機というのは、特別に名指しできるようなものを対象化しているわけではないが、世界-現実をどの様に感じとらえているのか、どの様に認識しているのかということが、一つのきっかけになっているといっても良いだろう。しかし作品は、その事柄がそのまま翻訳するように移し替えられる訳ではない。

それらは支持体と表層、線とかたち、色彩とかたち、あるいはかたちとかたちの間といったものの関係のなかで解体され、表面のざらつきのなかで新たな意味を生成し、新たな世界を現前させてくれる。そして契機となった現実-世界は明示的なものとして表象されることはなく、背後へとおしやられる。それにもかかわらず、立体的な形態を持つ作品では壁という現実を背景に、一定の空間を占有し、かたちと空間あるいは時間の否応もない体験の知覚によって現実へと遡行していく。

作品が観る者にとって常に「何か」についての表現であり、作品の背後にそれを求めるものであるならば、「何を」描くかということが、どの様に描くかということに先行しながらも、どの様に描くかという絵画の実践のなかで形成される世界について、もう一度思い至らなければならないかもしれない。

キャンバスや紙の上に「何を」描くのか。先行する「何を」に、私は自身の作品を選択した。私自身の作品を対象化したのは、一つには作品を、壁という現実の背景、空間の占有、かたちと空間の関係性、そして時間といった現実の回路から、もう一度解き放ってみたかったからかもしれない。それは、生への欲望とは裏腹な欠落感から異なる位相から観ることを欲しているのかもしれない。 

私自身の作品を再現的に描写することによって作品は壁から遊離し、そこでは何が描かれているのか、どの様なものであるのかは見えても、それが何であるのかは不明のものとして浮遊し、絵画という表面のざらつきのなかで現れている。



PROFILE

稲 憲一郎 (いな けんいちろう)

1947 東京都練馬区に生まれる
1972 東京造形大学美術科卒業


 

【個展】
1972 74,75,76,77,78  サトウ画廊(東京)
1979 83,84,87  ときわ画廊(東京)
1981 82,83,85,87  コバヤシ画廊(東京)
1981 86,87,89,92,95,97,98  ギャラリー檜(東京)
1987 ギャラリー・るなん東京)
1988 Sherry Art Space(東京)
1989 アートフォーラム谷中(東京)
1990 「さまざまな眼ー25」 かわさきIBM市民文化ギャラリー(川崎)
1991 ギャラリー現 (東京)
1992 西瓜糖 (東京)
1994 「根底への問い」1970年代の美術 村松画廊 (東京)
1997 版画集〈Oval 1977〉 ギャラリー檜 (東京)
1999 岩川邸 (東京・八王子)
2002 ギャラリー檜 (東京)
2004 SPCギャラリー (東京)

【グループ展】
1968 三人展 村松画廊/東京
1969 Qのために用意された椅子 村松画廊/東京
1969~70 精神生理学研究所 毎月一回郵送による
1970 ニルヴァーナ展 京都市美術館 /京都
Summer Exhibition Art & Project /アムステルダム
December 1970 Art & Project /アムステルダム
1971 Summer in TAKAO 東京造形大学/八王子
観念の外延展 ギャラリー16/京都
言葉とイメージ 展 ピナール画廊/東京
1973 実務と実施十二人展 ピナール画廊/東京
京都ビエンナーレ 京都市美術館/京都
1974 展それぞれ 田村画廊/東京
1975 AFFAIR & PRACTICE 現代文化センター/東京
1979 第六感 展 神奈川県民ホールギャラリー/横浜
1983 方法序説 彩鳳堂画廊/東京
1984,85,86 方法序説 日辰画廊/東京
1985 背後の、解読 山梨県立近代美術館/甲府
1986 万象の変様 埼玉県立近代美術館/浦和
1987 風の姿 ときわ画廊/東京
5月の湘南 藤沢市民ギャラリー/藤沢
降り立った絵画 東京都美術館/東京
1988 響層ー湘南 藤沢市民ギャラリー/藤沢
彩発 ギャラリー檜/東京
欲望の海をわたる絵画 川崎市民ギャラリー/川崎
揺相 欲望の海をわたる絵画 ギャラリー現/東京
溶蝕 欲望の海をわたる絵画 神奈川県民ホールギャラリー/横浜
1989 君よ、時の旋律をたぐれ ギャラリー・サージ/東京
豪奢と静寂と悦楽 代々木アートギャラリー/東京
1991 表層のエロス ギャラリー・サージ/東京
1992,96,99, 眼の座標 代々木アートギャラリー/東京
01,02 distance ふるえる誘惑 ギャラリー檜/東京
線の表現―眼と手のゆくえ 埼玉県立近代美術館/浦和
1992 マグニチュード 展 長岡市美術センター/長岡
1993 再制作と引用 板橋区立美術館/東京
1995,96 水彩の網 展 ギャラリー手/東京
1996 反復する原点 村松画廊/東京
1997,98,99 汎展  ギャラリーほさか・他/甲府
1999 版による?・? ギャラリー檜/東京
さまざまな眼―仮面グライダー かわさきIBM市民文化ギャラリー/川崎
1998 NEW VISION SAITAMA 埼玉県立近代美術館/浦和
1999 distance no.19 ギャラリー檜/東京
2000 distance no.20 ギャラリー檜/東京
2000~01 半島・1 MIURA ART PROJECT/ゲームと手段 三浦半島/三浦
2003 眼の座標 代々木アートギャラリー/東京
DROWIMGS 2003 -aridokoro- SPCギャラリー/東京