玉 征夫 展
↑ スライドサムネールの Click or Tap で拡大画像が開きます ↑
玉 征夫 新作展 「事変2021」
1.11(Mon) – 1.23(Sat) 2021 Closed on Sunday
PM12:00~PM7:00 (Last Day PM5:00)
棄民の裔 玉 征夫
私が小学四年生だった頃、満州から引き揚げてきた人の子弟が、学校に編入されてきた。男の子で、一年生の妹と同じクラスだった。ところが会ってみて驚いた。私よりかなり年長だったからだ。会話はともかく、読み書きができないということだったらしい。満州について知ることは後年になる。戦後、満州に取り残された邦人に対して、吉田茂首相の日本政府は、食糧難などを理由に彼らの帰還を拒否したのである。祖国に見離され、棄民となった彼らを救ったのは米軍であった。もっとも人道が理由で助けたわけではない。残留日本人が共産主義者になることを恐れたからである。
棄民は現代もある。原発事故で福島を追われた人が、ホームレスになった話を聞くと、満州に棄てられた人々と何ら変わらない気がするのである。もしコロナ禍を戦争と捉えるなら、責任は個々に問われている。