開催日程
2006年08月29日(Tue)〜09月09日(Sat)
PM12:30~ PM07:30 (最終日PM05:30)
Closed on Sunday
「天 開く」どこから来て どこへ行くのか 伊藤 七男
4~5年前に田舎へ帰って古い絵を整理していたとき、どうしても気になる作品を集めて那須のアトリエに持ち帰った。昨年、その倉庫にしていた家が火事になり持ち帰った作品以外は全て灰となった。そして持ち帰ったものだけが現在手元に残っている。
今回、DMに使った父親のデッサンは大学時代に帰省したとき描いたものだ。父親は今から24年前75歳で亡くなった。人智学では、人間が生きていた時間の中で睡眠していた時間の長さだけ、この世に想いが留まるということを読んだ。およそ人生の三分の一がその時間だろう。父親のデッサンを見ていて、そろそろ父親もこの世に未練が無くなり、次の世界へ旅立つのだろうと思った。今回の展覧会は、それを第一のテーマとして「天 開く」とした。
つぎに、古い作品から自分自身と関わりのある人物画を展示してみることにした。どの作品も制作当時、完成しなくて苦戦した。その時は,どの様に進めれば良いのか判らなくなり途中で投げ出した形になっていたが、今改めて観てみると当時の心境が良く出ていて、意味のない作品ではないと思える。作品を観て感じたことは、作品というものは自分の意識されない性質を好むとか好まざるに関わらず表出するものだ。人は自分を変えることが基本的には出来ない。自分自身は変ったと思っていても、他人から見ると何も変わっていないのである。つまらない自己抑制をしてみても本質は変えられないのだから、自分で枠を作らず好きなように表現してみたい。この限られた自分の世界を受容して前に進んでいくしか方向性は無いといえる。
さいごに、自分が現在気になる今後の展開を探って、この個展の全体像を表してみた。「どこから来て どこへ行くのか」ゴーギャンも探っていたこのテーマは人類にとって永遠の課題となる。絶えず人類はこの問い掛けを確認しなければならない。私自身もこの課題は重要なもので、生きている限り避けて通れないものだ。
私はどこへ行くのか、その行く末はわからないが、ここに展示したモノがこの次の道しるべとなるだろう。
平成18年8月吉日